学生時代に登山を経験する中で、人の手が加わっていない植生が、高山帯と山地の限られた場所にしか分布していないことを知って、人跡未踏の地に広がる「手つかず」の安定した生態系で繰り広げられる自然の造形「原生林」に惹かれるようになりました。
すべての生物同士の関係が絶妙なバランスで平衡化し合う世界が、人間が関わることのできない場所で粛々と営まれている事実に、植物と森の恐るべき素顔を見た気がして、畏敬の念を持つようになりました。
この経験を発端として植物・植生への関心が日に日に高まり、後日上野公園で偶然通りかかった五月展で「盆栽」を初めて目の当たりにしたとき、自分が山中で出会った木で印象的だった部分がすべて抽出されたようなその木姿に、衝撃を受けました。
禁忌の領域に一歩足を踏み入れたような深い森が、鉢の中で作品として整えられた状態で表現された盆栽は、それまでこの単語から自分が思い描いていた、植木文化のもう一つの頂点を司る古臭く気だるいイメージを一掃して、全く目新しい独創的で革新的な技芸の世界に映りました。
自分と盆栽との関係はこのような出会いから始まります。
自分のなかで小品盆栽とは、自然に従いつつ、時に荒ぶる自然と対峙する知恵を身に着けた人の「生存をかけた真正直な営み(文明の結晶)」というエッセンスが注入された造形であると思っています。
いつでも人の住む世界は森に還ろうとする力にあふれていて、植物が主人公の自然界において、人間はその片隅に住まわせてもらっている脇役に過ぎず、飲み込まれる自然と対峙しながら暮らしている事実があると思います。
ヤマゴボウに覆われた町なかの空き地に森林化の第一歩を見ながら、青々と茂る鉢植えの木に土中の微生物が活発に活動する様子を想像したり、町の中でも自然の脅威を感じ取ろうとすればいくらでも素材は転がっています。
これらの感覚を小品盆栽はいつも呼び覚ましてくれます。自分を野生にする、戦う力が必要とされていることを、自然と人の工芸的感性の融合である盆栽が教えてくれている気がしています。
Kenji Kozakai
2006-
Started to learn professional Bonsai technics at Akimoto Engei, located at Kawaguchi City in Saitama.
2013-
Launched activities of perticipating to exhibitions, holding workshops, careing for customers’ trees and so on mainly in Tokyo. Still keeping to learn advanced technics at Akimoto Engei.
